臨床心理学の基礎を築いた河合隼雄氏による著作です。人生で訪れる苦難や葛藤に遭遇した際の心の持ち方や心構えなどについて、全55章のパートに分けて綴られた内容となっています。今後、人生という修行を乗り越えながら生き抜く人々の心の支えとなる本となるでしょう。
「こころ」を生業としてきた著者が語るこの55章は、時にユーモラスに、時にシリアスに綴られており、読者に新たな気づきを与えます。その内容は、上から目線や教え諭るような調子ではなく、非常に自然体で書かれているため、重苦しさがなく、内容がスムーズに心に入ってきます。気軽に手に取り、ふとした時に読むのもおすすめです。読んでいるうちに、生前の河合氏に会いたかったと思わせるような、魅力的な本です。
1.人の心などわかるはずがない
・臨床心理学の専門家の特徴は、人の心がいかに分からないかということを確信をもって知っているところ。
2.「理解ある親」をもつ子はたまらない
・子供を真に理解することは、ほとんど不可能に近いほど難しいという自覚が必要。そんな難しいことの真似ごとをやるよりは、まず自分がしっかり生きることを考える方が得策のように思われる。
3.灯台に近づきすぎると難破する
・灯台(理想)がだんだん近くに見えてきたときは、我々は慎重でなければならない。その灯台に注目するのみでなく、闇の中をじっと目をこらして見ると、はるか遠くに他の灯台が見えてくるはずである。それに従ってわれわれは自分の航路の変更を行わなければならない。
4.100点以外はダメなときがある
・人生にもここぞというときがある。それはそれほど回数の多いものではない。とすると、そのときに準備も十分にせず、覚悟もきめずに臨むのは全く馬鹿げている。ところが、あんがい、そのようなときでも90点も取ればよかろう、という態度で臨む人が多いように思われる。このような人が、自分はいつも努力しているのに運が悪いと嘆くのはことの道理が分かっていないと言うべきであろう。
5.マジメも休み休み言え
・休んでいる間に人間は何か他のことを考える。休みという余裕が一本筋の自分の生き方以外に多くの他の筋があることを見せてくれる。「マジメも休み休み言え」の「休み」が大切。
6.人間理解は命がけの仕事である
・他人のことを真に理解しようとし出すと、自分の人生観が根っこのあたりでぐらついてくる。これはやはり「命がけ」と表現していいことではなかろうか。実際に自分の根っこをぐらつかせずに、他人を理解しようとするなどは甘すぎる。
7.ものごとは努力によって解決しない
・努力などせずに、子供のために父として母としてそこにいること、これは凄く難しいこと。それよりは、飛行機にのって偉い先生を訪ねて行く方がよほど楽である。
8.自立は依存によって裏づけられている
・人生のなかには、一見、対立しているように見えて、実はお互いに共存し、裏づけとなるようなものが案外多いのではないかと思われる。
9.灯を消す方がよく見えることがある
・目先を照らす役に立っている灯を敢えて消してしまい、闇のなかに目をこらして遠い目標を見出そうとする勇気は、誰にとっても、人生のどこかで必要なことと言っていいのではなかろうか。
10.うそは常備薬 真実は劇薬
・素晴らしいと思ってもいないのに「素晴らしい」と言ったり、似合っていない服を「似合っている」と言ったりする必要はない。しかし、よく観察すると、うそではなくて何かよいことが言えるはず。
11.心配も苦しみも楽しみのうち
・重荷を支えることに共に参加しているという感じが必要。
12.「幸福」になるためには断念が必要である
・覚悟もなしに自分のやりたいことをやって「幸福」が手に入らぬと嘆いている人は、「全面降伏」の人生ということになろう。


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