本タイトル5作品目は、トルコ・ギリシャ・地中海を渡る旅を描いた物語。旅も終盤に差し掛かり、著者自身にも少しずつ変化が訪れます。その変化は、読者にも新たな気づきや心の動きをもたらしてくれることでしょう。どのような結末を迎えるのか――本書は、その行き先を静かに指し示してくれる旅の案内人のような存在です。
・同じように旅を続けていると思われる家族と遭遇。しかし、子どもの目には「外界に対する途方もない無関心の色」が浮かんでいた。(好奇心の摩耗)
・ヨーロッパの冬は寒い。しかし、その寒さは宿に帰っても誰もいないという寒さである。遊戯場で出会った老人の暖かさに触れ、寒さが和らぐ場面もあった。
・テヘランの街は著者に都会を感じさせ、自身が生活の場からどれだけ遠く離れてしまったかを感じさせた。
・「パルテノン神殿」は廃墟として徹底的に死に切るわけでもなく、ただ観光地として無様に生き永らえていることを感じているようでもあった。(アクロポリスの丘で生きていたのは野良猫だけだった)
・一方で「ミストラ」は実に空虚で、実に美しい風景だった
・トルコからギリシャへ、それはイスラム圏からキリスト教圏への移行「茶(チャイ)の国から茶(ティー)の国へ」
・ギリシャに入って何かが違ってしまったように感じられるのは、土地が変わったせいではなく、私自身だったかもしれない
・長い旅は、人生(一生)と同じ。幼年期があって青年期、壮年期、老年期がある
・旅を即文章化する必要はない。旅を反芻しながら、鍛えながら文字化していくことは以前には多くなされていた


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