読書好きな著者が働き始めてから本を読む時間が取れなくなったという実体験を元に、「そんな社会はおかしくないか?」という疑問を抱きます。そこで、日本の近代以降の労働史と読書史を紐解き、日本人の仕事と読書のあり方の変遷を辿りながら、その答えを導き出していく本となっています。
本書は単にタイトルに対する結論を出すだけでなく、現代人の生き方そのものについて疑問を投げかけ、読者に考えさせる内容になっています。この疑問は、現代社会を生きる多くの人が感じたことがあるものだと思います。本書では、その問いに対して「半身で働く」というキーワードを提示しています。全力で働いている方や、現代社会に疑問を抱いている方は、本書を読むことで立ち止まり、考えるきっかけを持つと良いでしょう。
1.まえがき
・働き始めて本が読めなくなったという声はたくさん寄せらている。そもそも本も読めない働き方が普通とされている社会はおかしいのでは。
・現代の労働は、労働以外の時間を犠牲にすることで成立している。
2.労働と読書は成立しない?
・現代の読書法には読書を娯楽として楽しむことよりも、情報処理スキルを上げることが求めらている。
・読書しようと思う意思の有無に、社会の階級格差が影響を及ぼしている。
3.司馬遼太郎の文庫本を読むサラリーマン
・70年代のサラリーマンの「休息」の象徴が、小説ではなくテレビとなったのと同じく、現代の私たちの「休息」の象徴は、小説やテレビではなくスマホとなった。
4.行動と経済の時代への転換点
・自己啓発書は「ノイズを除去する」姿勢を重視。自己啓発書が売れ続ける社会は、ノイズを除去しようとする社会。
5.仕事がアイデンティティになる社会
・過去や歴史とはノイズである。文脈や歴史や社会の状況を共有しているという前提が、そもそも貧困に「今」苦しんでいる人にとっては重い。
・読書して得る知識にはノイズ(偶然性)が含まれる。読者が予期しなかった偶然出会う情報を、私たちは知識と呼ぶ。
・電通社員過労死自殺事件の被害者である高橋まつりさんのSNSでの言葉。”仕事は楽しい遊びやバイトと違って一生続く「労働」であり、合わなかった場合は精神や体力が毎日摩耗していく可能性があるということ”。
6.読書は人生の「ノイズ」なのか?
・大切なのは他者の文脈をシャットアウトしないこと。仕事のノイズになるような知識をあえて受け入れる。それこそが、私たちが働きながら本を読む一歩なのではないだろうか。
・半身で働く。
・働いていると本が読めないのは、仕事以外の文脈を、取り入れる余裕がなくなるからだ。
7.「全身全霊」をやめませんか
・普段は残業代を払い、景気後退をしたときには、その残業代を減らせばよい。これが日本企業における「残業の糊代(バッファ)」と呼ばれるからくりである。
・新自由主義は決して外部から人間を強制しようとしない。むしろ競争心を煽ることであくまで「自分から」戦いに参加させようとする。なぜなら新自由主義は自己責任と自己決定を重視するからである。
・「全身全霊で働きたくなってしまう」ように個人が仕向けられているのが現代社会。
・自らで自らを競争に参加させ、そして自分で自分を搾取してしまう。
・「燃え尽き症候群」つまりバーンアウトは、うつ病に至る病である。私たちの社会においてはそのことが周知されていない。



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