本書は、「センス」とは何か、さらに「芸術」とは何かという視点まで掘り下げて展開されています。「センス」という言葉は日常的によく使われますが、実際にどれほどの人がその意味を理解しているでしょうか。直感的に「良い」と感じるものや、心に響くもの、違和感のない感覚として使われることが多いかもしれません。しかし、その解釈は人によって異なるのではないでしょうか。著者は、この曖昧で定義が難しい「センス」について、1冊を通して深く探求しています。
「センス」とはどういうものなのか著者と共に探求する気持ちで読み進めても良いと思いますし、「センス」という単語に対し、ここまで深堀を行い、言語化をしていく著者の思考法を学ぶ視点で読み進めていくのも面白いと思います。
1.「センス」という言葉
・センスとは「直感的にわかる」ことである。(直感的で総合的な判断力)
・センスの良し悪しは、小さい時からの積み重ね、「文化資本」に左右される。文化資本の形成とは、多様なものに触れるときの不安を緩和し、不安を面白さに変換する回路を作ることである。
2.センスとは何か
・美術でも音楽でも何もない状態から作ることはない。創造行為の根底には「選ぶ」ということがある。
・モデルの再現から降りることが、センスの目覚めである。特定のモデルに執着しない。(文化資本が多いと特定のモデルに片寄らない)。「ヘタウマ」でいい。
3.リズムとして捉える
・ものごとをリズムとして捉えること、それがセンスである。
・「規則と逸脱」、「反復と差異」がリズム。
・より正確に意味を実現しようとして競うことから降りて、ものごとをリズムとして捉える。このことが、最小限のセンスの良さである。
4.いないいないばあの原理
・絵では何を言いたいのかではなく、ただのリズムとして楽しめるようになる。それがセンスの目覚め。センスとはものごとのリズムを生成変化のうねりとして、なおかつ存在/不在のビートとして、という2つの感覚で捉えること。
・リズムとは複雑に絡み合った生成変化であると捉える。
・いないいないばあは「0と1のビートをうねりとして巻き込むリズム」である。誰かがいないという人間にとって根本的な寂しさを完全になしにするのではなく、潜ませながら乗り越える形である。意図的に作られたストレスを楽しむ。
5.意味のリズム
・大ざっぱな感動を半分に抑えて「意味のリズム」だけを見る。いろんな部分に宿る「小意味」を見て、その絡まり合いを楽しむ。また、意味というもの全般を、「何と何が近いか遠いかという距離のリズム」として感じる。
・意味の関係とは「距離」である。意味のリズム=距離のデコボコという関係がある。
6.並べること
・デコボコというのは要素がどう並んでいるか。とにかく並びが大事。
・つながるものとつながらないものがあるという認識は間違っている。少なくともそれは客観的にはなく、設定次第である。どのように並べてもいいという最大限の広さから「制約をかけていく」という方向で考えてみると良い。
7.センスと偶然性
・面白いリズムとは、ある程度のバラつきがあり、差異が適度なバラつきで起きること。
・まったくのランダム、偶然のデタラメな状態でも人はそこに何かを見出して面白がることができる。
8.時間と人間
・芸術に関わるとは、そもそも無駄なものである時間を味わうこと。あるいは、芸術作品とは、いわば「時間の結晶」である。
・悩むよりも行動というのは、意味からリズムへとも言い換えられる。
・人間にとって楽しさの本質というのは、ただ安心して落ち着いている状態ではない。楽しいということは、どこかに「問題」があるということ。漠然と問題があって興奮性が高まっていることが、不快なのに楽しい。楽しさのなかには、そのように「否定性」が含まれている。



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