牛尾剛氏は、マイクロソフトの「Azure Functions」チームに所属し、グローバルなクラウドサービスの開発に携わっています。このチームは、世界一流のエンジニアたちによって構成されていますが、彼らの高い生産性は、卓越した能力よりも効果的な「思考法(マインドセット)」に由来しています。本書には、その内容を基にした仕事術が書かれていますが、主に「~をやめる」というような身を軽くすることに真髄があると述べています。これは、仕事の枷(かせ)となるものを一つ一つ荷下ろしていっき、脳にスペースをつくることで心身が楽になり、仕事を飛躍させることができると説明しています。
本書は冒頭にある通り、思考法について焦点をあてた本です。著者はプログラマとしては遅咲でガチの「三流」であると紹介しています。そんな著者が一流のチームで仕事を進めるうえで学んだ数々の思考法が列挙されています。また、この思考法はビジネスを進めるうえでの環境にも大きく影響を受けているものと思われます。日本で働くビジネスパーソンからすると環境の違いに驚くと共に、数々の気付きを得られることかと思います。また、この思考法はビジネスだけでなく、自らの人生を幸福にするためのヒントとなるでしょう。
1.世界一流のエンジニアは何が違うのか
プログラムが動かなくなる問題が発生した際、一流のエンジニアはむやみに試行錯誤をすることはせず、仮説を立てはじめてから手を動かしていた。試行錯誤は「悪」との考えに基づいている。
頭が良くても理解には時間がかかると認識している。「理解に時間をかける」ことを実践している。著者が考える理解の3要素は以下。
・説明可能
・応用可能
・いつでも使える
基礎練習は誰でもできることではあるが、習得には時間がかかる。ただし、基礎が身に付いていなければいけない。
2.アメリカで見つけたマインドセット
・「Be Lazy(怠惰であれ)」というマインドセット。これはより少ない時間で価値を最大化するという考え方である。
・検討ばかりでさっさと「やらない」ことは最大のリスク。やらない方が必ず失敗する確率が増える。
・「納期は絶対」の神話を捨てる。Q、C、D、S(スコープ)はトレードオフの関係にある。納期を固定する場合は「スコープ」を出し入れするのが現実的である。
・「たくさん物量をこなす」が生産性が高いということではない。生み出すものの「価値」にフォーカスするマインドを身に付ける。
3.脳に余裕を生む情報整理・記憶術
・プログラマにとっては、やみくもに頑張るのではなく、いかに「自分の脳の負担を減らすか」というアプローチが非常に有効である。自分にとって難しすぎると感じる時は、たいてい脳の使い方が間違っているサインである。
・マルチタスクは生産性が最低になる。「今手を付けている仕事を1つに限定する」=「WIP(Work In Progress)=1」
・物事ができるようになるファクターの要素として、基本と構造の「理解」がある。ベーシックな理解が深いと脳の負担を減らすことができる。
4.コミュニケーションの極意
・ディスカッションでは「間違えたら恥ずかしい」という感覚は一切捨てる。
・自分の意見を言うときには「In my opinion」というフレーズを入れる。(あくまで自分の意見では。自分の意見を述べさせてもらいますねというニュアンス)
5.生産性を高めるチームビルディング
・マネージャの主な仕事は「アンブロック」であることを理解する。開発者がどこかで詰まっている状態になるとブロックされているものを取り除く(アンブロック)こと。
6.仕事と人生の質を高める生活習慣術
・仕事ばかりしていては短期的なアウトプットは上がったように見えても、根本的な生産性は上がらない。生産性を上げる秘訣は「学習」。仕事は定時で切り上げて、自分のやりたいトピックを勉強したり試したりする。
7.AI時代をどう生き残るか?
・Chat GPTはどうやってつくられたのかという問いに対し、開発者がそれは7年間の研究の成果だと答えていた。エンジニアリングは小さな積み重ねで強くなっていくことをあらわしている。本当に新しいものを生み出したかったら、絶対的に時間がかかる世界であることを理解する。時間をかけて小さな努力を積み重ねる方が圧倒的に良いものが作れる。
・日本独特の批判文化は致命的な足かせになりかねない。アプリケーションはどんな優秀なチームが開発しようが必ず何かしらの不具合は存在することを理解すべき。


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